2018.4.20 コラム / 特集

「良い属人化」「悪い属人化」って?~サポート現場におけるナレッジ構築のヒント~

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「で、どこから変える?」

と、その本のサブタイトルにはありました。最近、「サポートセンターのナレッジを再検討したい」とか、「社内の情報がバラバラなので、FAQでなんとかしたい」という相談を頂くケースが増えてきました。そんな、ナレッジ構築について悩んでいるサポートセンターのマネジメント層の方や、IT部門の方々にお勧めの書籍が『職場の問題地図 著:沢渡あまね』です。おそらく、今書店へ行くと結構な割合で平積みしているので、見かけたことがある方も多いかもしれません。

本書は、いわゆる学者が書いた理論だけの書籍とは違います。著者の沢渡氏は、オフィスコミュニケーションを専門に行うコンサンルタントで、自身の過去の経験から、職場の“あるある”を書籍化したものになっています。だから、実際に目を通してみると、確かに「それ、お客様からの相談で、あるな~」ということが書かれていました。
では、11の章にそれぞれ分けられた課題の中から、特にみなさんが知りたいであろう『属人化』についてピックアップしてご紹介します。

ナレッジ構築を阻む壁とは

ところで、みなさんの身の回りでこんなことはありませんか?「新しくナレッジを形式化してみんなで共有しよう!」という時に、決まって反発するベテランのオペレーターさんや、もしくは社員というケース。まあ、ナレッジに限らず新しいことをやろうとすると、たいてい難色を示すのがベテランの方々…。

「そうそう」と、心の中で頷いてくれたみなさま、ありがとうございます。そうなんです、どこの職場やサポートセンターでも、起きているこの現象。実は人間の心理的欲求と大きく関係しているのです。心理的欲求というのは、マズローの5段階承認欲求とか、そういう類のものです。人間は誰でも(釈迦レベルやキリストレベルは別として)承認されたいという欲求を持っています。欲求を持つこと自体は仕方がないこととして、その承認されたい欲求がどこにあるのかが問題となります。この「どこにあるのか」を理解していないで、改善をしようとすると、ベテランから猛烈な反発にあうのです。なぜか?それは、彼等にとっては存在価値を脅かされる程の脅威になるからです。

ちょっと視点を変えてみましょう。ベテランの方たちが感じている、自らの存在意意義ってなんでしょう? それは、彼らにしかできない仕事があることです。彼らの頭の中には、長い間培ってきた経験やノウハウというものが沢山詰まっています。だから、オペレーターさんからあがってくる、ある種のエスカレーションには、私でなければ対応できない。ですとか、ある業務を遂行するには、もしくは売り上げを上げるには、私が必要。という状態が、ベテランの方々に存在意義を与えているのです。つまり、多くのベテランの存在意義は、私にしかできないという「結果」にあるのです。本書では、これを結果承認欲求とよんでいます。

例えば、「あの仕事、○○さんじゃないとわからないんだよね」とか、「○○さんに休まれちゃうと、現場が回らなくなるから休まないで」という状況になると、彼らの承認欲求センサーがビンビン反応します。

私の経験上、この結果承認欲求は本人が気づいていないケースも多く、無意識にそのような状況を作りだすことも少なくありません。だから、休めなくて本人の身体は悲鳴をあげいているのにもかかわらず、結果承認欲求の方が強いために、自己重要感を満たすことができる大変な状況の方を選ぶほうが安心するのです。このようにして、自らジレンマに陥りながら欲求を満たしているという、ちょっと笑えないことも起こりうるのです。

だから、ナレッジを共有して全体のパフォーマンスを上げようなんて誰かが言い出した日には、「あなたの存在意義を減らしましょう」と言われているのに等しく、反発をしてくるのです。

では、どうすればいいのか?

本書では、この結果承認欲求を、別の承認欲求で満たしてあげる方法が書かれています。ひとつの方法として、プロセスで承認欲求を満たす方法です。これは結果ではなくプロセスに焦点を当てていく方法です。

たとえば、サポートセンターのナレッジを構築するのであれば、ベテランの方々がナレッジを作り上げていくプロセス自体を評価していく方法があるのではないでしょうか。また営業部門であれば案件を受注した売上げ結果ではなく、お客様への継続的なアプローチであったり、提案資料の内容に焦点を持っていくなどです。このように、結果ではなくプロセスへ焦点が当たった欲求が、プロセス承認欲求になります。

さらに、承認欲求にはもっと強力なものがあります。どのようなものか想像がつきますでしょうか?おそらく勘のいい人はもうお分かりかもしれません。それは存在承認欲求です。シンプルですがパワフルです。一番わかりやすいのは「○○さんがいると、職場が明るくなるね!」という、存在自体を認めるような評価です。本書では、ナレッジ(ノウハウ)化を推進する仕事を、ベテランの方が誇りに思えるような、ポジションを与たり評価制度があればいいと説明しています。

それから、属人化には「悪い属人化」と「良い属人化」があるそうです。「悪い属人化」は、ナレッジ化すれば、他のメンバーや社員の業務の質が上がったり、効率化される「あたり前」の部分がナレッジ化されていない状態です。つまりFAQ化することによって、仕事の質が均質化されたり、仕事が早く終わって早く帰れる状態ができていない属人化のこと。「良い属人化」は、みんなができて「あたり前」の部分がしっかりとナレッジ化された上で、「ベテランでなければ対応できない」という付加価値がちゃんと属人的に残っている状態です。

というわけで、言うは易く行うは難しですが、もしナレッジの属人化で悩まれているのであれば、承認欲求のポイントをズラしてみてはいかがでしょうか。『職場の問題地図 著:沢渡あまね』興味がありましたらぜひ読んでみてくださいね。

この記事の執筆者

中野 篤史(株式会社オウケイウェイヴ)

中野 篤史(株式会社オウケイウェイヴ)

株式会社オウケイウェイヴの法人営業。ビジネス書を読むのが好きです。サポートに関するお悩みがありましたらお気軽にご相談ください!

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