2019.4.19 コラム / 特集

【サポートの現場から】Vol.9 サッポロホールディングス株式会社

◆サッポロホールディングス株式会社の河本さん

企業を支える「サポート部門」。サポートに携わっている人たちは普段どんな業務をしているのか、どんな想いで働いているのか、サポツウ!編集部は知りたい。そして、皆さんにも知って欲しい!という勝手な使命感で、各企業へ突撃取材&インタビューをしています。

企業情報

会社名 サッポロホールディングス株式会社
創業 1876年
従業員数 7,902名(連結)
事業内容 酒類事業、食品飲料事業、不動産事業
ホームページ http://www.sapporoholdings.jp/

– 今回はサッポロホールディングスの河本さんにお話しを伺います。さっそくですが、まずは会社とご自身の自己紹介をお願いします!

サッポロビールを中心に、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、サッポロライオン、サッポロ不動産開発などを含むサッポログループ全体を統括する会社です。少し前まで持ち株会社であるサッポロホールディングスと人事・総務・経理・ITといった業務を担当するサッポログループマネジメントに分かれていたのですが、私はサッポログループマネジメント側にいました。
私の所属する改革推進部 兼 BPR推進室というのは、グループと事業会社の経営基盤に変革をもたらし、最終的にグループ全体と各事業の利益創出に貢献するのがミッションです。グループの業務改善を行う専属組織であり、最先端技術の活用・推進を行う部署でもあります。
創業140年を超える古い会社だけに昔から慣例的に行われている業務もいろいろあるのですが、それが今も本当に必要なのかを見直し、不要ならやめるという選択をする立場でもあります。そのため、現場の知識を持つ人間が兼務で集まっている部署になっていて、実は上長含めて9名の中1名を除いて基本的に他業務との兼務です。

– グループ全体で8,000人近くいるのに、兼務中心で9名とは少数精鋭ですね。みなさんがFAQを担当されているわけではないんですよね?

部署として全体で関わるプロジェクトの状況や課題解決について打ち合わせをしますが、FAQ担当としては、立ち上げたのが私なので主に私が担当です。各利用部門とは利用状況をフィードバックしたり課題解決について相談したりしますが、外部ヘルプデスクも活用しています。

サッポロホールディングス 担当者の1日

時間 職種:経営企画
9:00~12:00 ・社内問い合わせ対応の実態把握(チャットボット利用数、FAQ参照率、アンケート調査)
・各利用部門へフィードバック
・各利用部門と課題解決に向けたディスカッション
・ヘルプデスクを交え、課題解決策の検討
13:00~17:30 ・未導入の事業会社への提案活動
・社内問い合わせ対応における目的・運用のプレゼン、およびFAQ管理研修の実施
・システムベンダーを交え、範囲拡大におけるシステム対策検討
18:00~19:00 ・上司へ報告(現状の対応状況へのアプローチや未導入提案活動におけるアドバイスを教授)

– 社外のヘルプデスクやシステムベンダーとの協力体制を作っているんですね! ところで、どんなきっかけでFAQが作られたんですか?

個人的な話になってしまうのですが、私は元々営業出身なんです。5年営業として働いてから、全く知識のないIT部門に異動になりました。最初は周りが何を話しているのかわからず、苦労しまして…。それでも5年ほどIT部門でCRMなどを担当して頑張ってきたのですが、営業時代の知人が会いに来てくれた時に言うんですよ。あのシステムは面倒だ、いろいろデータ入力などの手間が増えてお客様に向き合う時間がない、って。一生懸命作ったシステムなのに現場の役には立っていなかったというのはショックでした。
その時に思い出したのが、IT部門に異動した時の上司が言った「ITに染まるな」という言葉です。当時は何を言われているのかわかりませんでしたが、振り返ってみればITに染まるというのはこういうことだったなと思いました。役立つシステムなんだから使ってくれと現場に負担をかけるのではなく、現場視点で不便を解決したいと考えたのがFAQへの第一歩でしたね。

– 「ITに染まるな」は名言ですね! 現場視点を持ったままITに関わっている河本さんが、営業のみなさんにとってはいい相談窓口だった気がします。ところでAIを活用したFAQという形にしたのはなんでですか? AIに詳しかったとか?

とんでもない! サッポログループとしてAI活用ははじめてでしたし、私自身AIの知識なんて全くなかったです。いろいろな本を読んだりセミナーに行きましたし、導入企業に話を聞きにも行きました。導入検討をしていたのが2016年なんですが、当時ちょうど金融業界などでAI活用の事例が増えてきていて、成長期だったため注目したというのはあります。
もともと社内にFAQ自体は存在したのですが、知識が散在していたり適切に更新されていなかったりと使いづらいものでした。当然、現場では探しきれなくて知っている人に問い合わせるわけです。これは問い合わせる側も、それに対応する側も負担ですよね。社内状況や現場の課題感をリサーチしてみると、社内問い合わせ対応に追われて本来業務に手が回っていない状況も見えてきました。そこで問い合わせ業務を効率化しようと研究する中でたどりついたのがAIでした。絶対効果があると確信して、経営層に提案できる社内制度に参加したんです。

– 経営層に直接アピールできる制度ですか……なんだか大変そう。

実際大変でした。(笑) 社内から誰でも参加できるのですが、まず論文を作って応募するんです。その期限が8月で、私の場合は6月に提案を決意したので2ヶ月でAIがわからない状態から研究して論文を書きました。 その論文が通過したら、今度は12月に経営層相手のプレゼンです。私の時は15本近く応募があったうち3本がプレゼンにたどり着いたのですが、私が3番目のプレゼンでした。プレゼンの経験なんてないですし、経営層相手というのは緊張するし、準備も当日も大変でした。

– 本来の業務を続けながら勉強して、論文を書いたりプレゼンしたりなんて、本当に大変!それでもやり遂げたというのは、とても熱い想いがあったんですね!

そうですね。プレゼンの資料づくりに向けてきちんと根拠のある数字を示すために、問い合わせの多い人事・経理・総務といった部署に協力を求めたことで「協働」もできましたし、社内全体を客観的に俯瞰した課題抽出や解決に至るプロセスを経験できたのは大きな財産だと持っています。おかげで、プレゼン自体は具体的な数字をたくさん出したことがよかったのか、わかりやすかったと評価されて採用されました。嬉しかったですが、もしもう1度やれと言われたら遠慮したいですね。(笑) あれは人生最大の勝負だったと思っています。

– 素晴らしい成果だと思います! そんな苦労の結果導入した新しいFAQは成功していますか?AIチャットボットはどうですか?

成功までにはちょっと時間がかかりました。新しいFAQができた段階では使ってもらえたのですが、検索数に対して実際にFAQを見てもらえた参照率を追って行くとだんだんと下がってしまったのです。上司から、もっと効果があるはずではないか、やり方に工夫ができるのではないかと指摘されて、利用拡大に向けて動きました。具体的には社内問い合わせAI強化期間というのを作って、とにかく1人20件使ってアンケートに答えてもらったのです。数値的な履歴とアンケートをまとめることで、「よくある質問」と「申請・手続き」関連の情報を上手く提示できれば約6割に対応できることがわかりました。そこで、チャットから回答を得るだけでなくチャットの画面の中に「よくある質問」と「申請・手続き」にたどり着くショートカットボタンを用意しました。

<AIチャットボットから端末手配画面へ>
<AIチャットボットからFAQ画面へ>

 

同時に、FAQの内容整備を外部ヘルプデスクに頼ることにしました。それまでは各部署に依頼していたのですが、本業で忙しいと登録が遅れてしまったり、早めに対応しようとして残業していたりしました。内容が充実しないのは困りますが、効率化のために作ったシステムで別の人が残業しているようでは違いますよね。そこでExcelでも何でもいいから回答の内容をくださいということで集めて、実際の登録作業はヘルプデスクに頼んだのです。それで一気に登録件数が2倍になりました。


– うわぁ! それはすごい頑張りですね。利用履歴のデータ活用や外部専門家の手を借りることは効果的だと思います。

はい。利用履歴の可視化はFAQを継続運用して行くための最大ポイントですし、FAQの新規登録や改善といった部分をヘルプデスクに頼ることで一気に生産性が上がりました。またFAQの直接閲覧も可能にしてありますし、2018年末に社内PCが変更されたのをきっかけにアプリとしてPCにAIチャットのメニューを登録しました。AIチャットで全て対応するのは限界がありますから、こだわらずに使い勝手を向上させたのですが、結果としてFAQ参照率は6割まで伸びました。
残りの4割はというと、実は雑談などが入っています。AIに向かって「疲れたよ」なんて言っている人がいるんです。これはこれで、どうもこの部署が疲れているなと判断したり、何か困っているようだと探ったりするBPRのネタになります。

– それは面白い現象ですね。最後に、今後の展開や目標を教えてください!

現在のFAQは、サッポログループマネジメントでの利用からはじまって、サッポロビール本社への展開ができたところです。グループ全体でいえば10%程度の人が利用しているイメージでしょうか。今後は、たとえば営業担当者向けには営業用に特化したFAQを作成して、AIからはそちらを参照するようにしたいと考えています。その延長で、最終的には外部へのFAQ展開もしたいですね。残念ながら人員リソースの問題から営業担当者がもし十分に伺えていないことがあれば、そういう方から直接見てもらえるようなFAQが展開できないかと考えています。
問い合わせ業務から開放されたことで生まれたリソースを、サッポログループのブランド価値創造を高める本来業務に展開できるようにしたいですね。BPRによって会社・組織として必要な業務改善を行いながら、外部と協働することで常に最新技術の動向をキャッチし、よりお客様に選んでよかったと言われるサッポログループになれるよう、精進していきます!

– これからどんどん拡大して行くんですね、とても楽しみです! 今日はありがとうございました!!

サポツウ!編集部より

今回はサッポロビールホールディングスでのAI&FAQのシステム導入の立役者である河本さんに登場していただきました。
FAQを作ってはみたけれど使ってもらえない、内容を充実させる手間が大きすぎて運用がまわらないという苦労話は多いものですが、その解決に取り組んだ流れはとても勉強になりました。社内を巻き込んで利用者側の実態を探ることや、外部の手を借りることの大切さを改めて感じました。
なにより、現場の苦労を取り除きたいという熱い想いを持ち続けた頑張りがすごい! 「もう1度はイヤ」と笑って話してくださる顔に、そんな頑張りがあったからこその成功なんだな~と実感しました。 河本さん、ありがとうございました!

サポツウ!では【サポートの現場から】に登場いただける企業様を募集しております。ご興味がございましたら、こちらよりお気軽にご連絡ください。

この記事の執筆者

サポツウ!編集部

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