2019.11.7 コラム / 特集

特別インタビュー:日本マイクロソフトが語る「サポート」とは【後編】

前編では、多彩な製品を利用する幅広いユーザーに向けたサポートを提供している日本マイクロソフトのサポート部門である、日本マイクロソフト カスタマーサービス&サポート本部がどのような組織体制で、どんな役割を担い、そして各メンバーが日々どのような意識で活動しているのかを紹介しました。
後編である今回は、日本マイクロソフトがカスタマーサポート部門を中心に行っている、今後へ向けたさまざまな取り組みについて、引き続き日本マイクロソフト株式会社 カスタマーサービス&サポート本部 カスタマーサービス&サポート本部長 執行役員 金起成(きん たつなり)氏と日本マイクロソフト株式会社 カスタマーサービス&サポート本部 ビジネスエンゲージメント マネージャー 髙橋路加(たかはし るか)氏に伺いました。
※前回の記事はこちら:日本マイクロソフトが語る「サポート」とは【前編】

 

カスタマーサポートで求めている人材と必要スキルとは?

日本マイクロソフトのカスタマーサポート本部では、約500人の社員と、その数倍の数にも上る協力会社スタッフで多彩な製品やサービスをお使いになる全ユーザーをサポートしているといいます。社員が担当するのは、協力会社のとりまとめ責任者としてコンシューマーユーザーに関わる他は、ほとんど法人向けのサポート業務。電話応対力やFAQからの適切な回答の引き出しといった能力だけでなく、製品のデバッグ作業なども担当できなければなりません。そうした中、求められている人材とはどのようなものなのでしょうか。

「必要なスキルということで列挙するなら、まずお客様の課題に応えられる技術力と問題解決力ですね。そして交渉力や会話力を含んだコミュニケーション力は欠かせません。組織の性質からいって、英語力や異文化コミュニケーション力といったグローバル力、またチーム力、リーダーシップ力といった能力を身につけることでより活躍の場が広がります」と金氏は高い能力を持った人材を求めていることを挙げてくれました。
技術力や交渉力といったあたりは一般的なサポート担当者に求められるスキルですが、英語力と異文化コミュニケーション力も求められるあたりが日本マイクロソフトらしさといったところでしょうか。グローバルな組織として米国本社とも繋がっているだけに、英語力は重要な武器になるはずです。

高いスキルを求めているカスタマーサポート本部ですが、組織の構成は特に年配者が多いわけではないようです。技術力を必要とするサポート業務の場合、他社では十分な技術力をつけたベテランエンジニアが担当しているというケースも多く見られます。しかし日本マイクロソフトの場合は、特にベテランを集めるということも、逆に新入社員にはまずサポートを経験させるということもないそうです。

他部署交流でキャリア形成のヒントを与える取り組みも進行中

「個人的な見解ですが、キャリアの早い時期にサポートを経験するのはいいことだと考えています。サポートを担当すると知識も対応力もつきますから。実は毎年、サポート人員として新卒採用もしていますよ。サポート対応をする中で他部署へ移って活躍できる力も身についていくという考えが最近では社内でできてきました」と金氏。
元々、日本法人のオフィスは東京地区の数カ所に分離していました。2011年に現在の品川オフィスが開設され、各オフィスが順次集まる形で統合されたわけですが、カスタマーサポート本部が合流したのはごく近年のことだといいます。

「元々、日本は狭いエリアに集まってはいたのでサポート案件ごとに協力したり、イベント開催時にお客様と技術的な話ができるエンジニアとして参加したりと他部署との協業はよくありました。これは海外では物理的な距離がありすぎて難しく、日本はうらやましいと言われたりする部分ですね。それでも自分の業務が忙しく、会社としても大きいためどのような部署があって、どのような仕事をしているのかということがなかなか見えないという問題はあったのですが、数年前に同じオフィスになったことで、あらためて他部署との交流をはかる社内の取り組みも強化しています」と高橋氏。

具体的には他部門の社員を招いてランチミーティングなどを頻繁に開催し、希望者を募っているということです。参加数も多く、交流自体は順調に進んでいる様子。それがキャリア形成に繋がるかどうかは、次のステップだといいます。

「キャリアは自分で作るものというのがマイクロソフトの文化です」と金氏。日本マイクロソフトでは、社内外へ向けてどの部署がどんな人材を求めているかということが公開されています。社内での異動も上層部からの辞令で動くのではなく、自分でそれを見て応募する仕組みで、社内ではありますが転職活動のようなイメージになります。希望通りにならないということも十分にあり、勇気のいるチャレンジです。

「例が多いわけではありませんが、全くサポートと関係のない部門へ異動して活躍している人もいます。またサポート部門の中で上位になる立場を目指す方法もあります。中にはずっとサポートの現場でやりたいという人もいますので、全員に社内異動をチャレンジして欲しいというわけではありません。ただ、自分達の力を気づかせてあげたいとは思っています。気づこうとしてやっているのと漫然とやっているのとでは違うので、そうならないように働きかけているところです」と金氏は語ってくれました。

サポートの現場で磨かれたスキルは、他部署でもきっと活きることでしょう。しかしそれは、サポート部門としても手放しがたい人材のはずです。異動によるキャリア形成を、他部署への流出とは考えないのでしょうか。
「もちろん、そういう考えの人もいます。ですが、サポートではない仕事が合いそうな人や他の仕事をやってみたいという人を囲い込んでおくと、転職して他社へ行ってしまうかもしれません。それならば日本マイクロソフトの中で別の仕事を見つけ、活躍してもらった方がいいという考えです」と金氏は企業全体の成長に向けた考えであることを教えてくれました。

もう1つのサポートチャネル「マイクロソフトコミュニティ」

これまで日本マイクロソフトのカスタマーサポート本部の、特に問い合わせを受けて対応する動きを紹介してきましたが、サポートチャネルとしてもう1つの窓口になっている「マイクロソフト コミュニティ」についても伺いました。マイクロソフト コミュニティは、ユーザー同士で質問し、答えることで知識が蓄積される場です。
「ユーザーコミュニティは過去から数種あったのですが、マイクロソフト コミュニティとなってからはカスタマーサポート本部が担当しています。コミュニティ公認のエキスパートなどの役割を用意している他、適切な回答がつかない時には協力会社や我々のエージェントが対応することにしてあります」と髙橋氏。

参加している技術者をマイクロソフトが評価する「MVPアワード」や、ギグエコノミーである「独立アドバイザー」など、高い技術力を持った回答者が多数存在し、またそのプロフィールの表示によって回答者の信頼性が利用者にもわかりやすくなっているのが特徴です。
「コミュニティの成功はサポートのキーになるものだと思っています。特に大切なのは、きちんとした答えが出る場であること。ユーザー交流の場ではなく、サポートコミュニティですから答えが得られないとダメです」と金氏。
マイクロソフトのサイトには日本語でも各種技術情報が公開されています。これに加えてコミュニティでは最新の事例やわかりづらい使い方といった質問を投げかけて答えがもらえる他、過去に多く存在した質問に関してはFAQという形で整理もされています。これらを活用することでユーザーが実際に問い合わせに至る前に自己解決できる状態が整えられることが1つの目標だということです。

本社からの新ツールを待つだけではなく独自の工夫も実施中

「お客様はご自身で解決できるのであれば、弊社に問い合わせをしたくはないはず、という前提があります」というのは金氏の言葉です。いかに問い合わせ件数を減らすかというのは、サポートを担当する全ての部門・担当者の悩みどころでしょう。
改善に向けた取り組みの中で企業ごとにさまざまな課題があるものですが、日本マイクロソフトの場合はグローバル企業の日本法人という立場ならではの悩みがあるといいます。

「日本マイクロソフトは、マイクロソフトの日本法人です。つまり支社ですからどうしても制限があります。たとえばサポートに使えそうな他社製のツールがあっても、それを日本が独自に導入するというのは難しいわけです。自社で決めていろいろと試せる日本企業がうらやましくなることもあります」と金氏。

また、髙橋氏も「アメリカではカスタマーサポートにおいてデジタル活用がどんどん進んでいます。AIやバーチャルエージェントでの対応などをやっているのを聞けば、もちろん我々も入れたいと考えます。しかしどうしても英語で開発がスタートするので、日本語で利用できるようになるまでにはかなり時間がかかってしまうのです」と、マイクロソフト全体での先進的な取り組みが進んでいる様子と、それを日本ですぐに使うことはできないという悩みを語ってくれました。

言語の壁があるため、日本語にローカライズされるまでには時間がかかります。さらに待っていれば順番に日本語版が提供されるという保証が全機能にあるわけではないため、期待して待ち続けるだけではいい結果に結びつきません。
「我々も待っているだけではなく、マーケティング部門とSNSでやれることを考えていろいろと工夫をしています。例えばLINEに日本マイクロソフトの公式アカウントを作り、そこからサポート情報に誘導するといった取り組みなどもやっています」と髙橋氏は許される範囲での工夫とチャレンジについて教えてくれました。

多くの日本企業が抱える課題や対策とは違った部分が多くある日本マイクロソフトの取り組みですが、カスタマーサポートという立場や、問い合わせ件数を減らしたいという目標は共通しているはずです。金氏も「使っているツールは違っていても施策面で参考になるものはあるはずですから、日本企業のサポート施策については聞いてみたいですね。今後、他社のサポート部門とのコラボレーションなどもより進めて行きたいと思います」と語ってくれました。

インタビューを終えて

サポート担当者のキャリアパスに関する考え方や、他部署との交流といった部分や、全社的には座席のフリーアドレス化が進む中でカスタマーサービス&サポート本部は固定席を採用するなど、業務を効率的に行なうためには全社的な方針に従うだけではない工夫をする姿勢は、さまざまな企業にとって参考になるものだと思います。

日常業務でマイクロソフト製品を日々使っていながら、そのサポートがどうやって行なわれているのか、なぜ日本語でサポートが受けられるのかといったことまで知る機会はなかなかありませんでした。今回のインタビューではそういった部分について興味深く伺うとともに、サポートに役立つツールを提供する企業として、ぜひ企業規模や業種を超えて互いに工夫を語り合い、参考にし合う場や情報を提供し、サポート業界全体の向上に貢献したいと改めて考える機会となりました。

この記事の執筆者

サポツウ!編集部

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