2018.6.25 サポート豆知識

ナレッジセンターサービス(KCS)~新しいナレッジの考え方~ 【第1回】

近年、ナレッジセンターサービス(KCS)を取り入れ、実践する企業が増えています。KCSに必要な考え方やその効果とは?HDI-Japanの山下さんより解説いただきます。(全4回)

ナレッジの棚卸はしてはいけない?

サポートセンターにはスタッフが利用するナレッジと、顧客が利用するFAQは、その鮮度を維持し、利用率を高めるため棚卸をしてコンテンツを見直し、品質向上に努めます。・・・と私も思っていましたし、実際にセンターで実行していました。しかし見直しには多大な労力と時間がかかり、アップデートした時にはまた時代遅れになるなど、なかなか利用されません。そんな時、米国でKCSのトレーニングを受講し、ナレッジの棚卸は時間と労力の無駄ですべきではないと教わりました。なぜかというと顧客対応のナレッジは、いわば顧客からの要求に応えるソリューションで、顧客の状況が変化する中では、ソリューションにも変化が求められ、結果として完成形はないので見直しても無駄だからです。

ナレッジは知識の倉庫ではない?

ナレッジは商品やサービスの開発者や専門家が作成し、それをセンターや顧客が利用するものと思っていました。しかしセンターで顧客対応の過程でナレッジがうまく利用できないのは、顧客の問い合わせる内容や表現が、専門家が記載したナレッジ記述との間にギャップがあり、検索してもヒットしないことがあります。またこの従来のナレッジには製品やサービスについて企業が持っている知識が記載されていますが、サポートスタッフの経験値や顧客の問い合わせ時の状況は含まれていないので、ソリューションとしては利用価値が低いこともあります。

知っていることは何かを知るために検索する

スタッフが知らないことを検索するためにナレッジを利用する、という考え方は正しいでしょうか。顧客から問い合わせを受けて、まずスタッフが自身の経験や知識で対応をしますが、人は瞬間的に浮かぶ知恵やソリューションは、本来知っていることの20%程度しかありません(HDI調べ)。そこでナレッジを検索すると、「こんな方法もあった」「この処理はさらに有効だ」と気づかされます。つまりナレッジは知らないことを知るために利用する以上に、知っていることは何かを知るために利用するのです。したがって問い合わせ対応時に、対応策がすぐに頭に浮かんでも、もっと良い方法があるのではと必ずナレッジを検索することが求められます。

問い合わせが同じでも対応策は異なる?

ナレッジコンテンツには、この問い合わせにはこの解決策をと、1対1で紐づけがちです。しかし顧客が問題に直面して問い合わせをするときには、その問題発生の状況や環境は様々です。したがって顧客に提供する対応策やソリューションも顧客の状況に合わせて異なってくるわけです。ソリューションナレッジには顧客の状況を含めて記載し、顧客に合った有効な対応策が提供できるよう、同じ問い合わせでも複数の解決策がある1対Nの考え方で作成しなければなりません。また顧客は現状の問題の回避策や対応策がほしいのであって、その問題が発生した根本原因の問題解決策がほしいわけではないことが非常に多いので、根本原因解決策を記載しようと時間をかけて調べることは効果的ではありません。

次回はKCSが作られた背景やセンターで起こっている重複作業の事実、そして従来型ナレッジの低い投資対効果について触れていきます。

この記事の執筆者

山下 辰巳(HDI-Japan 代表取締役 CEO)

山下 辰巳(HDI-Japan 代表取締役 CEO)

HDI-Japanは日本のサポート業界の要請に応え、世界のHDIと同じコンセプトで2001年に設立、2006年からHDI問合せ窓口格付けを開始し、様々な業界で活用されるようになりました。現在はサポートセンターの発展とともに新しいナレッジの考え方の普及に取組んでいます。
URL:http://www.HDI-Japan.com

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