2019.1.25 サポート豆知識

コールセンターの「レジリエンス」を育てよう【第3回】

「感謝の樹」を植えよう

苦しいことがあっても、凹んでも沈みこんでも、再び起き上がる力、回復する力が「レジリエンス」です。「レジリエンス」は、誰もが持っています。そして、しなやかでより丈夫な「レジリエンス」を育てることができます。 ストレスなしでは過ごせないコールセンターです。コールセンターで働くすべての人が「レジリエンス」の重要性を知り、「ストレスにさらされてネガティブ感情に覆われたとき、自分のネガティブ感情に気づき、『瞬間的に対処する力』を身につけること」と、「逆風が吹いても折れずに立っている木には、地面の下に根が張り栄養を摂っているように、『レジリエンスの基礎(根)』をつくること」の両側面から、レジリエンスを育てる方法を数回に分けてご紹介します。第3回は、「感謝行動」についてです。「レジリエンスの基礎(根)をつくる」ための方法です。
※過去の記事はこちら 【第1回】【第2回】

お客様からの「ありがとう」

コールセンターでは、電話の終わり際に「ありがとうございました」「ホッとしました」「助かりました」など、お客様から「感謝の言葉」をいただくことは、決して珍しいことではありません。これが仕事のやりがいや喜びに結びつき、大変な仕事であっても「やっててよかった」と思う瞬間でもあります。職場内ではどうでしょうか。私たちが顔を見合わせ日々過ごしている職場を、「ありがとう」が行き交う職場にしていきたいものです。

できて当然やって当然のごとく、「電話応対では『ありがとうございます』を忘れずに、感じ良く言うように」と指導されていることでしょう。そうすべきことは頭では分かっていますが、お客様との対話の状況によっては気持ちの安定が崩れ、言えなかったり、気持ちのない言い方をしてしまったり、となることもあります。

働く仲間同士の「ありがとう」

コミュニケータがお客様に「ありがとうございます」が難なく言えるようにするには、コミュニケータの皆さんに「ありがとう」のシャワーを浴びてもらうのも、一つの方法です。

桜の季節、センターの壁に樹の絵を描いた模造紙を貼りました。そこに、桜の花びらの形に切ったメッセージカードを全員で貼り付けました。メッセージカードには、「○○さんへ。・・・・・・・で、ありがとう。□□より」と書かれています。お互いに書き合うので、桜の樹はすぐに満開になりました。「人から何か良いことをしてもらうと、自分も返したくなる」と言われています。感謝のメッセージをもらったことで自分のなかに感謝の気持ちが沸き、メッセージをくれた人に返事を返すだけでなく、ほかの人にも感謝メッセージをあげたくなる気持ちが出てくるのです。そのつもりで、仲間たちを見ていくと、「そういえばあのとき、○○さんに、・・・・・なことをしてもらった」と思い出し、感謝メッセージを送りたいと思い、業務終了を待ってカードに書いて貼るのです。

こうした「感謝」を「行動で示した」ことが、桜を満開にしました。「感謝すると第三者に向社会的行動をやってあげたいという気持ちが高まる」とする機能が感謝にはあるそうです。(『東京未来大学モチベーション研究所フォーラムwell-beingをめざし明日のモチベーションをはぐくむために~』(相川充先生)2016.11.14より)

「書きたいから早く出勤します」「夕方になると後ろを向いて桜の樹を見ます。自分への『ありがとう』が書かれていることを思い出すと、もうひと息がんばろうと思えるからです」「人の良いところを見るようになりました」「書いて帰ると、気持ちが良いんです」と、「ありがとう」を贈り合ったみなさんの声です。桜の時期が過ぎた頃、メッセージカードはあて先の人ごとにまとめ、袋に入れてリボンをかけてプレゼントしました。

書き出す

「ハッピー・コミュニケーション・ワークショップ=通称:ハピコミ」では、ふせんを用意します。同僚、部下、上司などの顔を思い浮かべて感謝のメッセージをふせんに書きます。書き方の約束は、「○○さんへ、□□より」を必ず書くこと。そして、具体的な内容を書くことです。「○○さんへ、実は私、○○さんの応対を横で聴いているんです。上手な応対だなぁと思って。ときどき真似するんです。隣の席になれて感謝です。ありがとうございます。□□より」「SVの○○さんへ、この間・・・・でアタフタしていた私に気がついて、すぐに寄ってきてくれましたね。助かりました。ありがとうございます」
書き始めると、会場はシーンと静まり返りました。次々とふせんに手が伸び、「そういえば、あの人にも」と思い出すようです。

語り合う

ワークショップに参加しているメンバーとメッセージをシェアします。ふせんに書いたものを声に出して読みあげます。「私は、同じチームの○○さんに書きました。・・・・・だから・・・・で」と、メッセージの背景にあることを、自然に紹介してくれます。聴いたら「拍手」です。言いたくないことを言う必要はありません。話してもいいなと思うものだけを読みあげます。他の人のことでも、話を聴いているとその場面が想像されて、気持ちが温かくなってきます。

「そうか、そういうことってありがたいな」と気づくこともあります。「『地震で大変な思いをしている札幌センターの人たちにメッセージを送ろう』と言い出してくれた人がいて、その輪がすぐに広がって、募金もたくさん集まったんです。みんなに感謝です」と話してくれた方がいました。良い感染力を持つメンバーに囲まれていることに感謝しているとのことでした。
シェアし合いながら、模造紙に描いた樹にふせんを貼りました。ワークショップが終了するまで貼っておきます。

行動する

ワークショップ終了時には、書いたふせんをすべて、模造紙から外して持ち帰ります。席に戻ってから、あるいは翌日以降、書いた相手にメッセージカードを渡します。ただ「はい」と渡すだけではなく、感謝の気持ちを、言葉と声に出して、相手に伝えます。
相川充先生によれば、「感謝の感情を『感謝行動』として外に出すことで、対人関係に影響を及ぼす」としています。「ありがとう」と心のなかで思っているだけでは相手に伝わりませんが、言葉に出して言うことで、相手に届きます。また、にこにこと笑顔で返したり、深々とお辞儀をしたりの身ぶり手ぶりも相手に気持ちを伝えることに効果を示します。職場に「良い対人関係」をつくりたいとするなら、「感謝行動」が表現されることが重要です。レジリエンスを高めるための「ポジティブ感情」には「感謝」があります。

絵本でひとやすみ

『ありがとうのえほん』(作:フランソワーズ、訳:中川千尋、発行:偕成社)
研修の始めに、「朝起きてから、今この研修室に到着するまでの間のことで、感謝できること、感謝したいこと」を紹介し合うことをすることがあります。「今日もちゃんと目が覚めた。ありがとう」「晴れ!お陽さま、ありがとう」「子どものニコッ。ありがとう」「夫よ、お弁当を作ってくれてありがとう」と、ほかの人のありがとうでも、いろいろな「ありがとう」を聞いていると、「あぁ、確かに」「そういえば、そうだ」と、自分の「ありがとう」も増えていきます。部屋の温度があがります。笑顔が生まれます。『ありがとうのえほん』は、朝起きてから寝るまでのあいだの「16のありがとう」が綴られている絵本です。私たちの暮らしは、「ありがとう」に囲まれていることに気づきます。

この記事の執筆者

奥 富美子(国家資格キャリアコンサルタント)

奥 富美子(国家資格キャリアコンサルタント)

「コールセンター20年×研修企画・講師30年×キャリアコンサルタント12年」の実績掛け算で、働く人・働きたい人のキャリア支援をしています。「コールセンターにキャリアコンサルティングが導入され、コールセンター就業経験がキャリア発達に有益であると評判になり、コールセンターにポジティブ・イメージを抱く人が増える」社会を目指しています。
URL:https://www.career-as.com/

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