2019.1.25 サポート豆知識

消費者の信頼損失リスクが企業を脅かす【第3回】~苦情対応に組織としてどう取り組むか?~

※過去の記事はこちら
【第1回】~皆さんの会社は大丈夫ですか?~
【第2回】~製品品質問題への消費者への組織的対応とは?~

苦情対応におけるリスク

顧客から寄せられる苦情への対応の良し悪しが企業に大きな影響を及ぼすリスクとなることがあります。
昨今では、顧客からの要求自体が厳しくなり、理不尽な要求や、自身の感情をコントロールできないまま企業へ不満をぶつける顧客も増えているなど、コールセンターやサービス部門、店舗など顧客接点の最前線にある部署の皆様は、強く実感されているのではないでしょうか?  苦情対応の初動を誤ってしまうと、顧客対応の工数やクレームコストが大きく増大する結果となることがあります。また、SNSなどへ飛び火して、他の顧客にまで影響が拡大することにより大きな売上げ損失を招いてしまうことも考えられます。
過去の苦情対応では、顧客対企業は一対一の関係だったので、苦情対応の内容が簡単には公にはなりませんでした。ところが昨今では、顧客の後ろにはSNSが控えており、苦情対応の一部始終がすぐに世間にさらされたり、発信者の意図的な情報操作によって拡散・炎上していくこともあります。企業にとって、苦情対応の失敗は大きなリスクであり、その対応には、公平・公正が常に求められます。

<顧客対応に起因するリスク>
1、サイレントクレームリスク
  顧客は苦情を申し立てて来ないが、黙ってその企業を離れてしまう。企業では把握が難しい。
2、ブランドイメージ低下リスク
  企業側の不適切な対応の結果により、苦情がさらに増加。顧客喪失やSNS等での拡散によって急激なブランドイメージ低下。
3、不当要求リスク
  主張が強い顧客からの執拗な要求をそのまま受け入れてしまい、個別対応することによって顧客要求事項がさらにエスカレートする。また応対者の対応のバラツキによって他顧客対応との公平性の不整合を指摘・公表され、複数顧客から苦情が増加・拡大する。

苦情対応における運営上の問題点

苦情がおきた場合、初動対応が重要となりますが、苦情対応を行う担当者の経験やスキルに依存、いわゆる属人化によって、組織としての対応力を欠いていることで、上記のようなリスクへの対応ができないということが考えられます。

みなさんの会社ではいかがでしょう?
これは、複数の企業とお付き合いしているなかで見た代表的な2つの事例です。

●苦情対応を特定の個人に任せきりにしてしまっているという問題
ベテラン社員の数名で日々苦情対応を行っているが、職人技ともいえる経験と度胸でこなす一方、ノウハウも人についたままで対応基準も会社として統一的な見解となっておらず、バラツキがあることで公平性の不整合を招いてしまっているようなリスクを抱えていませんか? また担当者は、日々の業務が苦情案件をこなすことで精一杯であり、ストレスを抱えていることでモチベーションも上がらず疲弊していませんか? 

●苦情の初動対応で、オペレーターに過大な負荷をかけているという問題
昨今は、コールセンターでは新規人材採用が難しく離職も多く、業界では慢性的な人手不足と言われています。苦情対応の現場任せによるストレスが一要因とも言われています。
苦情を最初に受けるのはオペレーターなので、初動対応如何で苦情の拡大を抑止できる可能性があります。しかし、苦情対応の研修・苦情対応用のFAQが整備されていない等の理由から、対応方針も曖昧で、個々のオペレーター任せとなっているため、オペレーターに負荷をかけてしまっているケースが多いようです。コールセンターの運用を見直すことが必要だと思いますがいかがでしょうか?

皆さんの会社におかれましても苦情対応の重要性や運営課題も理解していながら、実際は「日常的な顧客対応・苦情対応で忙しく、それどころではない!」と案件対応で終わっていませんでしょうか?

苦情対応に重要な3施策

ではどこから手をつければよいでしょうか?
苦情に対する仕組み作りを、基本的な業務運営に追加するような組織的な取り組みが必要になってきます。弊社では実践経験から10個の施策を運営していますが、まずはこの3つの施策を進めていくことをご提案します。
1、苦情に特化したFAQの運用
オペレーションやテクニカルサポートのFAQはあっても苦情対応のFAQを運用しておらず、苦情対応を個人のスキルに頼っている場合があります。顧客の心情的不満や要求に対し、会社の方針や苦情対応におけるセオリーを盛り込むことにより、苦情対応FAQを実践で活用することで、応対者の対応力が平準化され向上します。

2、クレームコストのガイドライン策定
顧客から対価をいただいている場合、苦情での返品・返金・値引きなどが発生することがあります。会社の対応方針をもとにガイドラインを策定することで応対のバラツキ抑止とクレームコストの改善につなげます。企業によっては、クレームで発生するコストを損金処理程度と判断していても、年間トータル費用で把握するとその額はばかにならないかもしれません。

3、苦情対応研修の実施
苦情対応FAQやクレームコストガイドラインを活用するためにも、苦情対応のセオリー・スキルを習得することが必要です。おもてなしや応対品質向上の研修は実施しても、苦情対応研修をなおざりにしていませんでしょうか?

苦情対応は究極の顧客対応といわれています。弊社の経験や実績も踏まえて、顧客の心情を理解し、心情的不満を浄化する苦情対応を行います。またこの対応手法は日常の応対にも活かすことができます。
よくある一般的な苦情対応の公開講座には、企業を代表した方が受講されますが、会社に戻られて、その企業全体の顧客対応力が必ずしも向上するものではありません。その理由は、そうした講座で一般的なセオリーを学ぶことができますが、それは、受講者の知識にしかなりえず、その企業のノウハウとして蓄積されておらず、実践において共有されないためです。
理想は、一般論ではない自社に合った社内研修を進めていくことです。そうすることで担当者の応対スキルが蓄積できます。また研修を一過性にするのではなく、年次の研修のメニューに組み込むことで継続的な人材育成計画とすることができます。


もう一つのポイントは
上記3つの施策を組織として階層別に組み立てることが「組織的運営」として重要です。各々の階層での難易度に応じて権限を付与することで、特定の階層に負荷をかけない、また組織として生産性向上に結びつけることができます。弊社は10年前からこの運用を「仕組み」として構築し、3次対応者が実対応だけでなく、苦情対応FAQ作成、クレームコストガイドライン策定や苦情対応研修の社内講師として活躍しています。

苦情対応の体制構築はナレッジ部門の支援が必要

社内推進体制についてです。

苦情の3次対応者が主体となってノウハウや経験値をもとに苦情対応FAQやクレームコストガイドラインを整理するとしても、可視化や体系化にはナレッジ部門の支援が必要です。コール分析やFAQの作成・設定などは日常業務でしょうし、新製品勉強会などの研修企画も行っている場合がありますので、その仕組みづくりにぜひリードや支援をお願いしたいと思います。3次対応者は実対応ができてもそれを組織として体系化することが苦手な職人気質の方が多い点もカバーできますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?3回にわたり消費者損失リスクが企業経営に大きな影響を及ぼす近代的リスクへの危機感を持つ必要があることをお話してきました、製品品質やサービス品質は「人」が介在する以上問題をゼロにはできないため、事前に組織的な対応準備を行っておくこと。苦情・クレームは日常的に発生するが、顧客対応を誤ると大きなリスクへ発展する恐れがあり属人的な対応に依存しているため組織的運営への取り組みを行う必要があること。この2点に関して是非取り組んでいただきたいと思います。

【オウケイウェイヴからのご案内】 弊社ではOKBIZ.をベースにしたナレッジ・ソリューションプラットフォームをご提供し多くの企業様にご利用いただいています。このプラットフォームにパートナー企業のノウハウなどの知財(コンテンツ)を提供する知財流通プラットフォームの販売を開始いたしました。今回、ソニーマーケティング株式会社の消費者リスクノウハウと弊社のOKBIZ.をセットにして「リスクマネジメントコンサルティングパッケージ」としてご提供いたします。 ご興味がありましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

斎藤 猛(ソニーマーケティング株式会社 カスタマーコミュニケーション事業室)

斎藤 猛(ソニーマーケティング株式会社 カスタマーコミュニケーション事業室)

ソニー製品の国内マーケティング事業において、製品品質問題やお客様対応における消費者クレームリスクマネジメントの実践ノウハウをもとに、企業のリスクマネジメント体制の構築を支援し、お客様との良好なリレーションシップの実現による顧客満足度の向上に貢献しています。
URL:https://www.sony.jp/support/cs-biz/

関連キーワード

おすすめ記事