2019.3.20 サポート豆知識

コールセンターの「レジリエンス」を育てよう【最終回】

「つながり地図」を広げよう

 コールセンターでは、個々にブースに着き、自分の業務をおこなって、あっという間に一日が終わります。コールセンターでの職業経験は、自身のキャリア発達にプラスの影響を与えているのですが、忙しさに紛れ、電話応対スキルが向上していることさえ気づかずに日々が過ぎていく人もいるでしょう。
 「コールセンターで仕事をする自分」だけが自分ではありません。仕事以外の自分もあります。過去の自分もあります。自分を見つめる時間をもつことは、「自分を大切にする」ことに他なりません。
 最終回は、地上に伸びる樹を支える根が、見えない地下でしっかりと張り巡らされているように、自分自身を支える根に栄養を与え、太く強くすることを考えます。「つながり地図」を書いて、経験を通じて成長した自分が、様々な人やものとつながっていて、それが自分を支える根となっていることを確認します。
※過去の記事はこちら 【第1回】【第2回】【第3回】【第4回】

過去とつながってみる

 自分とつながっている「人・もの・こと」を書き出して地図状に広げてみましょう。「自分を支えてくれる人、大切にしているもの、癒してくれる場所、懐かしい思い出、経験、好きな言葉や曲」など、自分が何とつながっているか整理してみます。誰とつながっていますか。誰とどのようなかかわりがありましたか。どんな子ども時代でしたか。何をしながら育ってきましたか。
 「女性は走ってはいけません。英国のレディはこう教育されるのですよ」と躾をしてくれた新入社員時代の役員。「バタバタと走るような仕事のしかたはよくない。美しくない。余裕をもった仕事のしかたをしなさい。それには、段取りが重要だ」との教えです。飲み会の翌朝は、まずは「お礼を言いに行くんだ」と教えてくれた上司。ビジネスマナーを手取り足取り教えてもらえた時代でした。そのときの教えが、今の自分とつながっています。
 出産の翌日、専門病院に向かう夫と娘を乗せた救急車の背中を、泣きながら見送ったこと。助産師さんの堂々とした姿とともに忘れることができません。レジリエンスの発揮が求められた出来事でもあります。

書き出す


 「ハッピー・コミュニケーション・ワークショップ=通称:ハピコミ」で用意するものは、A4の白い紙です。カラーペンやクレヨンがあると、より楽しく書けます。静かに自分の「これまで~いま」をふりかえってみましょう。第4回で書いた「ごきげんライン」は、時間の流れに沿ってふりかえりました。今回も同じようにふりかえりをしますが、ここでは「人・もの・こと」の切り口から広げていきます。
 紙の中央に「自分」を描きます。名前でも、人のイラストでも何でもOK。最近の自分の写真を貼ってもいいでしょう。千手観音のように自分から手がたくさん出ているように想像し、その手が何を掴んでいるのか、誰と手をつないでいるのか、昔を思い出して書き出します。
 「~のときに、~してくれた〇〇ちゃん」「教室で一緒になる〇〇さん」「仕事でお世話になっている〇〇さん」「子ども時代から捨てずにずっと持っている〇〇」「週に一度は必ず行く〇〇屋」 
自分の生活をふりかえると、大切にしている「もの」や、なつかしい「ものごと」が出てきます。そこには必ず人がいます。自分が多くの「人・もの・こと」に囲まれていて、決して一人ではないことが明らかになります。

語り合う

 書いたシートを見せ合って、仲間とシェアします。注意点は、いつもと同じ。話す人は、言いたいことだけ、話してもいいことだけを話します。無理にすべてを打ち明ける必要はありません。聴く人は、やさしいまなざしを向けて話を聴きましょう。うなずいたり、あいづちを打ったり、ときには質問をしたりしながら聴きます。聴かせてくれたことに感謝を伝える拍手をおくり、交替です。

再びふりかえり~気づきのとき

 グループメンバー全員のシェアが終わったら、もう一度自分の「つながり地図」を見つめてみましょう。自分がどのような「人・もの・こと」とつながっていたのか、あるいはつながってきたのか。いま、自分の周囲に何があり、誰がいるのか。そんなことが一面に広がっているのではないでしょうか。そして今、何を感じていますか。どのようなことに気づきましたか。

支えてくれる「人・もの・こと」がある

 「ハッピー・コミュニケーション・ワークショップ=通称:ハピコミ」に参加した日は、自宅に帰ったらもう一度「つながり地図」をながめてください。私には、「私を支えてくれる『人』がいる」「私を支えてくれる『もの』がある」「私を支えてくれる『こと(経験)』がある」と思えることが大切です。
 「~なことがあったけど、〇〇さんのおかげで気持ちが楽になり、~が進んだ」「〇〇の本で出会った~という言葉。これを自分に言って、自分をはげましてきた」など、「こと(経験)と人やもの」がつながっていることも多いでしょう。「こと(経験)」の積み重ねが自信となり、これからの自分を支えます。失敗と思えることも、よき経験として活用すればいいのです。
「自分には何もない」ように感じられたときには、この「つながり地図」を出してみましょう。あるいは、再び書いてみましょう。地図を自分の目で確認すると、「~なことがあったけど、乗り越えた私。きっとこの先も大丈夫」と信頼できる自分が見えてきます。レジリエンスが芽吹いていることの証です。

絵本でひとやすみ

 レジリエンスの連載も今回が最終回です。困難に遭遇しても立ち直る力:レジリエンスを誰もが持っています。
 『わたしとなかよし』(ナンシー・カールソン:作、中川千尋:訳、瑞雲舎:発行)の主人公は、「私は私を大事にするの」と宣言しています。「だから、歯磨きもするし、ごはんももりもり食べる」「私は私に、いっぱい本を読んであげる」と言います。
 「元気が出ないときは、うんと楽しいことをして遊ぼう」「転んだときは、『へっちゃら』って、はげましてあげよう」「失敗したって、もういっぺんやれば、きっとうまくいく」と教えてくれます。レジリエンス力が高いかわいい子ブタちゃんです。
 自分のレジリエンスを育てる重要ポイントは、「自分を大事にすること」です。

この記事の執筆者

奥 富美子(国家資格キャリアコンサルタント)

奥 富美子(国家資格キャリアコンサルタント)

「コールセンター20年×研修企画・講師30年×キャリアコンサルタント12年」の実績掛け算で、働く人・働きたい人のキャリア支援をしています。「コールセンターにキャリアコンサルティングが導入され、コールセンター就業経験がキャリア発達に有益であると評判になり、コールセンターにポジティブ・イメージを抱く人が増える」社会を目指しています。
URL:https://www.career-as.com/

関連キーワード

おすすめ記事